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カモフラージュ

「修兄ってさ、」
「なに」

智は雑誌に視線を落としたまま、修はバナナを頬張りテレビを見ながら、それぞれに言葉を紡ぐ。

「俺のこと好き?」
「はぁ?!」

ぱたん、と雑誌が閉じられて、端整な造りの顔がゆっくりと前を向く。

「やっぱそっか」
「ちょ、お前…っ、何言って!大体俺はまだなんも言ってな…!」

まるでその修の言葉を耳に入れないかのように、適当に雑誌を机に投げ出すと智はのびをした。

「素直にはい、って言うわけないとわかってたからさ」
「お前、何が言いたいんだよ」

智はゆっくりとカップを口に運び、冷めかかった珈琲を飲み干した。

「だってそうだろ?表向きは美那絵さん好き好き言ってる。それで、田中ちゃんや兄貴には懐いてる。陽のことは可愛がってる」
「…?」
「つまりはさ、修兄って本当に好きなひとに素直に感情出さないでしょ。『いやよいやよも好きのうち』ってやつ」

ひとり勝手に屁理屈をこじつける智のペースに修が付いて行けるわけもなく、また付いて行く意思があったのかも不確かなことだった。



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