DMCファンタジー「蒼い月」

鎮魂の太鼓
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***

「先にサリアのところか?」
「うん」

魔族のダニエルを支え、彼とともに生きて行きたい、
同情しているのではなく愛しているのだと
クラスメイトだったサリアは訴えた。
幼い頃から囚われの身ですごし、心を閉ざしていたダニエルは
葛藤を経て、サリアを受け止めた。
戦争はそんなふたりの"明日"を 帳消しにしてしまった。
しかし 彼のとどめをさしたのは
他でもなくダンテ自身だ。

自軍と敵対する人間に捕らわれ みせしめの壮絶なリンチを受けていた。
そこにはすでに なんの大儀もなく、ただ狂気があるばかりだった。
自分では安息が得られないダニエルは
その場にでくわしたダンテに死を乞うた。
ダンテの魔弾は ダニエルの心臓を貫いたのだ。

「軍から婚約者の彼女にもどされたのは少しの遺品だけだ。
けど、彼女が欲しいのは ダニエルの死の真実。
それを伝えられるのは 俺。 あいつにとどめをさした
俺だけだ。
その役割を 果たしたい」

***
ごく普通の中流家庭の家の前。
テラスのベンチに サリアとダンテが並んで座っている。
ダンテの訪問をうけたのは彼女の母親だった。
どうやらうちに入るのを断られたらしい。
遠目にみながら 弐伊は 短くため息をついた。

15分も話したときに 家のなかから父親らしき人の声がした。
サリアが不満そうに返すのを ダンテがなだめている。
最後に握手とキスをかわすと、ダンテはテラスのステップを降り
こちらにむかってくる。
その後ろでサリアが耐えるように いつまでもダンテを見送っていた。
ダンテは振り向かなかった。
ふたりはそれぞれなりに 友の死に結論をつけたのだろう、
弐伊はそう 感じた。

***

「けじめ、つけられそうか?
サリアも、それから おまえも」
「うん・・・」
「あれ、見せたの?」
「ダニエルの欠片?
いや。

サリアは・・
あのこはダニエルの死を 自分のせいのように悔やみ、悲しんでた。
そうだろうな、
ダニエルを戦場に追い立てたのは
彼女のおやじさんだ。
娘と結婚するならニンゲンの仲間である証明を立てろ、って。
彼女のために ダニエルはおやじさんのいうことを承諾したんだ。
けど、先に結婚を望んだのはサリアだ。
ただ幸せな生活を夢見ただけなのに
最悪の結果を招いてしまった・・・
サリアはいま その後悔を乗り越えようとしていた。
必ずそんな理不尽な差別や
若い恋人達が悲しい別れをしなきゃならない争いなんてない世界をつくるんだって
そりゃ 途方もない夢かもしれないけれど、
やっぱ、やんなきゃいけないんだってぼろぼろ涙をながしながらだったけど、
きっぱり言い切ったんだ。
そして、ダニエルはずっと自分の中に生き続け、
たとえ 自分が誰かと結婚することになっても
自分の目を開いてくれた特別なパートナーとして記憶に刻むんだって。
彼女にダニエルの欠片はいらない。

むしろ ダニエルには なにものにもしばられない
ほんとうの解放が必要だ。
ずっと 縛られてきた。
いま、あいつが 本当に好きだった海へ、
連れて行ってやろうと思う。」
「・・・」
「あの時、引き金を引いたことを 後悔してない・・・
俺も、アイツも、もしも 力を解放したら
その場のニンゲンなんか簡単にふっとばせたかもしれない。
けれど ダニエルは ニンゲンの傲慢を甘んじて受けていた。
いつか その身が終止符を打つのをまちながら・・・
それが・・
魔の血のせいで 安息の瞬間がやってこない。
苦痛は延々と続くんだ。
だから・・だから」
「・・・悔やんでいないんだろ?
その思いを貫け。
彼の願いを聞きそれを果たしてやった闇の王として
堂々としていろ。
それができたのは おまえだけだった。
結末は哀しいが、ごまかしのきかない 選択の時だったんだ」


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