DMCファンタジー「蒼い月」

夢の欠片(境界線エピローグ)
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<モンマルトルの坂道>

「俺なぁ、すごくメジャーな


<モンマルトルの坂道>

「俺なぁ、すごくメジャーな観光地なんだけど
モンマルトル界隈、好きなんだ。
ひと筋通りを入ると静かでさ、
小さな工房の前を通ると
ふっと 溶き油か何かの匂いがする
あの感じがいいんだ・・・」
急勾配の石段を ゆっくり上りながら
弐伊が独り言のように言った。
「なにか 思い出でもあるのか」
「ん? いや、ただこういう雰囲気が好きなだけだ。
落ち着くだろ?」
「まるで芸術家だ」
「そうさ。 ベレー帽とかかぶった俺を想像しろ。
画伯にでも みえるだろ」

ダンテは一瞬 目を丸くして弐伊を見た。
そしてすぐに 座り込んで笑い出した。

「ぎゃはーーー! やめろ、想像した!
おかしすぎだぜ、それ」
「お・・・おまえ・・・
そりゃ 冗談で言っただけだけど、
そこまで 笑うか?」
「ベレー帽のついでにスモックも着てよ。
くまさんのアップリケ、つけてやるよ」
「あ〜、ひでぇ・・・
あのな、俺もおまえくらいのときは
かわいかったんだぞ。
そりゃ、今はしかめっ面がお似合いのおっさんだけどな。
アップリケも似合うときがあったんだっ」
「いや、それは想像できねぇよ。
今がいいよ」

そういうと パンパンと尻をはたいて立ち上がり
チュッと弐伊の頬にキスをした。
その時ダンテは坂の上に小さな幌を張るワゴンを
横目に見つけた。

クレープ屋だった。

「あ、弐伊! フランスはやっぱ、クレープだよね。
いこっ」

坂の上はちいさな円形の広場になっていた。
そこから いくつかの方向に道がのびている。
カフェ、アパート、それから 道の向こうに小さな画廊。

ワゴンのクレープ屋に走ると
ダンテは覗き込むようにして 注文しだした。
「ホイップはたっぷりね。いちご、ある?
ちょっと多い目にいれてよ」

それを聞いて 弐伊が訳知り顔で言った。

「だぁめだめ、ホイップなんて邪道。
クレープは シュガー&バター。
これに限る!
騙されたと思って そうしろ」

じっさい クレープは生地自体が香ばしい小麦の香りがあり、
さっと ふりかけたグラニュー糖は
そんなに多くはなかったのに
バターはそのままでキャラメルのような甘さを感じさせた。

「ダンテ、そこのカフェで飲み物を買ってくるよ。
おまえも パナシェ飲んでみろ」
「なにそれ」
「ビールのソーダ割り。さっぱりして おいしい。
ちょっとまってて」

ダンテはベンチに腰かけ
ひとつ 息をついた。
穏やかな時間だった。

その時
坂の下から駆け上がってきた少年がいた。
大振りの平たいバッグを肩にかけている。
ダンテはその少年から眼が離せない。

少年は白に近い 銀色の髪をしていた。


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