DMCファンタジー「蒼い月」

「蒼い月」バージル篇
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プロローグ

******

時を刻むのを忘れたような 
深い山である。
ただ 木々の巨大さのみが 
人にその時の長さを感じさせる。
けもの道さえない森を
風のように駆け抜ける影がふたつ。
ひとつはちいさく、
もうひとつはそれより ひと回り大きい。
ときおりその影から 
きゃっきゃっという 
笑い声が聴こえるが、
それが夢なのか、
うつつなのか

ここは 
漠とした異世界に迷い込んでしまったような気にさせる。

******

その深い山に 
ぽかんと 開いた
陽だまりのような土地に 
ひとつの村があった。

見る限りでは 
二十足らずの世帯しかない、小さな村だが、
ふもとの村々の木造の家とは異なり、
煉瓦を組んで造られている。

人々は
狩ってきた獣の皮を細工したり、
道具をこしらえたりという、仕事をしていた。

銀の髪と大きな青い目をもつこの村の住人を、
ふもとでは異形の村として怖れていた。

この村の祖先が
はるか昔、
異世界のものから人間を守ったという言い伝えは
この地方に広く知れており、
人々は彼らのその姿とともに、
畏怖にちかい感情をいだいている。

長い年月の間に
敬意は怖れへ、
怖れは差別になりかわり、
できるだけ関わらないようにすることが
当たり前となっていた。

社会と交流をしなくなった村は貧しくはあったが、
いちど守ったものは見守っていく、
誇り高い精神を守っていくという教えを
引き継いでいた。

ただ、
全く交流がなくなったわけではなく、
山のもの、
里のもの、
物々交換の機会をみては 
微妙な関係を保っていた。

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