小説館新館*凍土の花

凍土の花
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§2 賭け

四はその人影を凝視した。

「いや、ち

§2 賭け

四はその人影を凝視した。

「いや、ちがうな・・・」

四はゆっくりその人影に近づいていく。

「ちょっと聞くが、このあたりを神の団体さんが通らなかったか」
「ふうん、驚かないんだ。
叫びながら抱きつきでもしてくるんじゃないかって、 
ちょっと期待してたんだけどね」
「そりゃ悪かったな、こうみえても一途なものでね。
もっとも おまえが きれいなねえちゃんだったら ちょっと休ませてもらったかもしれないが」
「なあんだ、一途が聞いてあきれるよ。
表のバージルが聞いたらどういうかねえ」
「表の?そうか、きさま 裏か。
どうりで・・・見た目はまったくバージルそのものだ」
「どうして区別をつけた」
「目だ。俺を見る 目が ちがう。
きさまの目は今来た回廊の氷と同じだ。。
見つめられるだけで凍りついちまいそうなほど 冷たい。
そして 深く冴えている。まるで深海をのぞいている気分だ。

ほめてるんだぜ。
てめえの目は 魔の美しさにあふれている。
ああ、美しいよ。闇の静寂のようにな。
けどな、俺のバージルには そこに一筋 光がさしてるんだよ。
あったかい光だ」
「それがあいつの弱さだ。
あいつはこの世界でそれを払しょくする。
新しい力を得る。 本来の力だ。
あいつはそれを求めた。
じゃまをするな。帰れ」
「帰れといわれてもなあ、 はいわかりました、って 言うと思うか。
本来の力?
そうだろう、あいつにはまだまだ俺にも計り知れないものがあるのかもしれん。
おまえのいう本来の力ってなんだ。
破壊、粛清、制圧か・・
俺たちは知ってる。
本来の力というのはもっと暖かいもののの上にある」
「愛か?絆か?」

闇のバージルが哄笑した。

「ああ、かわりにいってくれてありがとよ。
まったく・・愛ほど口にするのが恥ずかしい言葉はないぜ」
「純粋な魔族のあんたが それをいうとはな!
ほんっと、涙が出るほど笑わせてくれるぜ」

四は ふんっと一度笑った。

「けどな、 そんな恥ずかしいもんが
どんな破壊的な力よりも強いんだって
俺らも教えてもらったんだよ。あいつらからね。
そして 俺はバージルを守ると誓った。
だから 連れ戻す。

おまえは けっして別人ではなく あいつの一部だよな。
そのお前がいうことは アイツの迷いそのものなんだろう・・・
俺はその迷いを超えたところにある本当の力を
もう一度気づかせよう」
「できるものか。
あんたはアイツの迷いを深くするだけだ」
「どうだ、賭けてみないか。
アイツを連れ戻せたら 俺の勝ちだ」
「お手並み拝見だな」
「よし、じゃあ、俺を行かせろ。
アイツらはどっちへ行った」
「・・・・あ〜あ、俺がうまくのせられちまったのかなあ」
「そうだな、まだ俺の方が上手かもな」
「これまであんたが歩いていた回廊はあんたの迷いが作り出したものだ。
あんたはそれを抜け出した。
もうどっちでもいい。進めばこの氷原はすぐに抜けられる。
大きな川に出るだろう。
門番がいる。 話せ」
「おまえはどうするんだ」
「俺はいったん消えるが またいずれ会う。
本当のバージルとしてな。
これまでのあまっちょろいバージルは消える」
「最後には表がでるのか 裏がでるのか・・・
俺は 俺のバージルを取り戻してみせる」
「・・・ふん・・・」

闇のバージルは目を細めて鼻先で軽く嗤うと すっと消えていった。
四は二、三度首を振ると顔をあげ、
キッと前方をみた。
まだ遥かな距離がありそうだが
視線のまっすぐ、その先に
一対の塔がそそり立っているのが見えた。

「あれが 『門』・・・だな」

***

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