どうして、包装紙とリボンを薄紫と紫にしてもらったのか。 いや、包装は全く悪くない。 包装してもらう際に、リボンを赤に代えてもらわなかった俺が悪い。 帰ってきてから、後悔した。 明日はバレンタインだからと、せっかく昨日のうちにプレゼントを買ってきたというのに。 バレンタインデーといえば、赤というくらい定番カラーなのに。 「アニュー、許してくれっかな…。」 そんなことでプレゼントを受け取らないなんて、子ども染みたことはしないとは思うが、気に入ってもらえるか心配だ。 しかも、プレゼントは無難なアクセサリーだし。 もっと違うものを期待していたとしたら、本当に申し訳ない。 最悪なのは、金属アレルギーなのと告白されることだ。 「あー、もう何で気付かなかったんだよ…。」 くしゃくしゃっと髪を乱暴にかき上げても、何一つ変わらない事実に、無性に苛付いた。 先ほど注文したブラックのコーヒーも、もう温くなっていた。 ごくりと燕下すると、少しだけ苛立ちも治まった。 きっとアニューは待ち合わせの時間より、10〜15分は早くやって来る。 彼女の性格からして、それは間違いない。 早ければ、あと05分ほどてやって来るだろう。 本来ならば、アニューが行きたいと以前から何度も言っていた美術館に行って。 それから、美味しいと評判のスイーツを食べて。 夕飯は超一流ホテルのディナーを。 …と、甘く幸せな時間を過ごす予定だったのに、いつの間に予定が狂ってしまったのやら。 「ライル…、遅くなってごめんなさい。」 「アニュー、そんなこと気にするなよ。」 「でも…。」 「まだ約束の10分前だぜ?」 ほら、と腕時計を見せてやっても、ライルを待たせたことに変わりはないから…と反省していた。 別に責めたくて、見せたわけじゃないんだけどなぁ…。 どうして、こうも上手くいかないのだろう。 俺って、今までそんなに不器用だったっけ? 「アニュー、これ…。」 「プレゼント…?」 「あぁ、今日はバレンタインデーだろ?」 「あっ…!」 アニューは完全に忘れていたのか、顔に焦りの色が濃く出ていた。 見返りが欲しくてプレゼントしたわけじゃないし、アニューが好きだからプレゼントしただけ。 だから、俺としてはお返しがなくたって、別に構わないけど。 アニューはそう思ってはいないらしく、申し訳なさそうにリボンを解いていた。 高そうに見える箱にちょこんとのせられているのは、手首が細く見えるというブレスレット。 初めから手首が細いのに、これ以上細く見えても仕方ない気がするが。 まぁ、デザインがスタイリッシュで可愛かったのが、たまたまそれだっただけだが。 「ありがとう、ライル。大切にしますね…。」 「あぁ、そろそろ行くか。」 「そうですね、この時期は日が暮れるのが早いから…。」 そっと右手を繋いでコートのポケットに突っ込むと、アニューは照れてぽっと頬を赤らめた。 本当にいつまでたっても照れ屋なところは変わらない、純真無垢な乙女だな、なんて。 ぴゅうと冬の凍てつくような風が吹くと、なぜかアニューがぴたりと歩みを止めた。 「アニュー、どうした?」 「マフラーは…?」 「は…?」 ふと自分の首元を見てみると、黒のマフラーがない。 どこかで落としてきたのか、それとも置いてきてしまったのか。 最近、新調したばっかりの高いやつだったのになぁ。 なかなか気に入っていたということもあり、失ってしまって残念な気持ちでいっぱいだ。 「もう、仕方ないですね…。」 ふわっと首にかけられたのは、真っ赤なマフラー。 アニューがこの前、地上に降りたとき買っていたもの。 羊が白の毛糸で編み込まれていて、値段の割に凄く可愛い代物。 女性用ということもあってか、二人で巻くには少し短い。 「ありがとな。」 「風邪を引かれると、困りますからね…。」 「……運命の赤い糸みたいだな。」 「…!」 ぼそっと呟いたつもりだったのに、アニューにはきっちり聞こえていたらしく。 また耳まで真っ赤に染めて、恥ずかしがっている。 もう本当に、可愛くて可愛くて仕方ないったらありゃしない。 まぁ、アニューが運命の赤い糸の相手じゃなくても、いいかな。 だって、こんなにも愛しいのはアニューだけだから。 赤い糸を結んで もしもアニューが運命の赤い糸の相手じゃなかったとしても、俺が結んじゃえばいいや。 * <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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