★刹フェル ☆2nd後、捏造 23世紀、本のデータベース化がすすみ、今では書籍を目にすることもめったになくなった。 フェルトはリンダから貰った写真集を持って食堂へ向かい、ドリンクを持って席へつく。少し年代を感じさせる本をめくることが、フェルトには楽しくてたまらない。 「フェルト、なにをしているんだ?」 そこへやってきたのはきっちりと制服を身に纏った刹那だった。少し前にイアンに呼ばれて格納庫へ行ったはずだが、用事は終わったらしい。 「これ、リンダさんが貸してくれたの。刹那も見る?」 そう言いながらフェルトは席をずれ、刹那の座る場所をあける。刹那は素直にそこへ腰をおろし、写真集を覗き込んだ。 「花?」 「うん。今度リンダさんと一緒に花を育てるの。どんな花がいいか参考にって」 リンダがラボで花を育てていることはCBメンバーなら誰でも知っている。刹那もフェルトから貰ったことでその事実を知った。 「花…すまない。なくして、」 「ううん、いいの。刹那が生きて帰ってきてくれたってだけで、いいの」 イノベーターとの戦いで、刹那は生死の境をさ迷いかけた。宇宙を漂っていたR2を見つけることが出来たのはフェルトのあげた花のおかげで、花があったからこそ刹那は今こうして生きている。 フェルトは「生きててくれて、ありがとう」と刹那に伝えた。 「そうだ。刹那はどんな花がいいと思う? この本のものはだいたい手に入るらしいんだけど」 せっかくもらったものを無くしてしまったことに落ち込む刹那を励ますため、フェルトは話題を変える。自分の前へ出された本へ、刹那は手を伸ばした。 パラリとページがめくられ、ふと手がとまる。 「刹那?」 「これがいい」 「え…サクラ? サクラは、ちょっと無理じゃないかな。木、だし…」 せっかく刹那が興味を示しても、ラボで木を育てることはまだ難しい。それを聞くと刹那は「そうか」と淡々と答え、写真集のページをめくる。そして小さな花を指差してこれ、と言った。 「うん、分かった。リンダさんに聞いてみるね」 笑みを見せると刹那は頷き、部屋へ戻ると言って食堂を出て行く。その後ろ姿が少し淋しく見え、フェルトは心を締め付けられた。 「サクラ、好きなのかなぁ…?」 そう思うと後は行動に移すだけだった。スメラギに許可をとり、数日後、地上へと降りる。 そして、驚いた。 「せ、つな?」 護衛のために、といって一緒に地上へ下ろされたのは刹那だった。 「買い物か? スメラギに荷物持ちになれと言われた」 ああそういうことか、と納得する。スメラギは刹那とフェルトが付き合っていることを知っているし、当然といえば当然の人選だ。 フェルトは、こっそり行動にして驚かせようと思ったのに…と少し頬を膨らませる。首を傾げる刹那への説明を省き、ひとまず行こうと言って歩き出した。刹那は特に不審がる様子もなく付いてくる。 決して、どこに行くのかなど聞いてこないところが刹那だと思った。 そこで、せっかく荷物持ちがいるのだから、と前々から買おうとしていたものを買い込む。刹那は文句も言わずに付いてきて、荷物を持ち、フェルトに楽をさせてくれた。 「ちょっと待ってて」 そう言ってアクセサリーショップへ入り、小さいものを買ってすぐに刹那の元へ戻る。 「もういいのか?」 「うん。ありがとう、買い物に付き合ってくろて」 「構わない。宇宙(そら)へ戻るか」 宇宙にしか住処はない。2人はすぐに軌道エレベーターへ向かい、宇宙へ上がる手続きを済ませた。宇宙へ戻るリニアの中で、フェルトは最後に買ったサクラの形を象った髪飾りを取り出し、刹那へ差し出した。 「なんだ?」 「この間サクラがいいって言ってたでしょ? 本物はあげられないけど、せめてこういう形でサクラをあげたくて」 思わぬサプライズをくらった刹那は目を丸くし、髪飾りとフェルトを見比べる。いつまでたっても受け取ってくれそうにないので、フェルトは手を伸ばして刹那の髪へ飾りつけた。 黒髪にちょこんと桜の花が咲き、思わず微笑む。 「かわいい」 「……嬉しくないな、その感想は」 ムッと顔を顰めた刹那は髪飾りを取り、手のひらへ落とした。柔らかく微笑み、「ありがとう」と言った。 「どういたしまして。……なに?」 急に刹那が手を伸ばし、フェルトの髪へ触れた。ふっと笑い、「かわいい」と言う。 刹那が触れたところへ手をやると、刹那へプレゼントしたはずの髪飾りがあった。思わず「もぉ」と膨れる。 「刹那にあげたものなのに」 「俺のものだ。俺が好きにしてもいいだろ?」 サクラがいいと言ったのは、フェルトの色だからだ、と刹那は言った。いつだって、刹那はフェルトを赤くさせる。 桜の色をキミにあげる 桜の花は、いつだってあなたの手の中にある。 end. <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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